平成8年度 研究報告 大分県産業科学積栴センタ一
色と注視点の関係の調査研究
w
人間工学及び生活文化の調査研究一
兵頭 敬一郎。坂下 仁志
企画・デザイン部
St ㍑dy oぎRel a七まons hまp be七veen Col or s and Wa七Ch Poまnt
一丁he s t udy of t ht l hu【ヨan engi neer i ng and てhel i \・i ng cul t ur e−
Kei i c hi r o HYODO。Hi t os hi SAKASHI TA Pl ∂nnl ng&Des i gn Di ㌔γ i s l on
要旨
現在まで企業二山ズ甲心のモノづくりがされてきたが,ニれからは本当に使用者の使いやすさが考慮されたモノが望
まれている。ヒトの形態的,生理的等のさまざまな特性に見合った配慮がなされたモノでなければ。それは太当によい
デザインとは言えない.特に高齢者は身体機能の低下により,モノに適応十る能力が低下するため,ヒトに適応させた
モノが必要である.
太研究では9 ヒトの感覚の出でもきわめて重要な視覚に着目し,ヒトはモノが持つ視覚的記号要素に対して,どのよ
うな注視あるいは視線移動を行っているかの調査研究を行う.また,高齢化社会を迎える今日,若年者と高齢者では遠
いがあるのか等を含めて調査研究することで、今後の各種のデザイン開発への寄与が可能となりプ 製品開発のバックデ ータとなるよう整備していく。
う 巨自勺
標識の色や電気製品,工業製品,照明のスイッチ部分, ドアのレバーなどを,視覚により探索する事は,巨常生
活の中で多く存在する。ヒトと機器とのインターフェー
スであるスイッチ類は,より[立つ事により探索は容易
になる。より日立つ性質は誘目性√L といわれ,色につ
いてぎまヲ 若齢者を被験者とした実験において,各色相色 の目立つ順序が尺度化されている,
しかし,加齢による誘目性の変化については未だ尺度
化されていないのが現状である.
一般的にさ 加齢に伴いき 4C歳代で近くのものが見に
くい老眼化が起こり始めるとともにラ 50歳代では眼球
に濁りと黄変を伴う白内障が少なからず進行する.これ
らは虹彩(絞り)ヲ 水晶体(レンズ)の変化による老化
の正常遅行の現象であることが分かっておりぎ 日常生活
の中での色の見え方の違いが確認されているゝ、∠
本研究では9 色彩の訴牒性について,加齢変化による
高齢者の視覚特性を把握し,各種機器類の設計に生かす
ことを目的とする.
2。1実験手法調査
色の[立ち度合いである誘目性の測定方法は主に眼球
運動記録法および主観的評価法の2方法で行われる.眼
球運動を記録する方法はアイマークレコーダー方式,眼
球電位計測方式等9 主観的評価法は,順位法9 一対比較
法ラ 選択法等畑 がある.
実験条件を設定する場合には,一般的な視覚特性や高
齢者特有の特性について配慮しなければならない.視点
を固定した視界の中にB,R9 G9 を置いた場合,それ
ぞれ=心から40〇,30〇 9 20ニ の視野角からはず
れると認知しにくくなるため丹,刺澱チャートは,視
野角20C 以内におさめる必要がある。また,高齢者は
レンズの調節機能の低下から。60才では100cm以内で
は焦点調節ができない可能性が増大するr 5ことから被
験者と刺激までは川Ocm以上の距離が必要となる争 2,2 若齢者】高齢者の実験
被験者は,若齢者22∼31歳(平均27歳)5人を
対照群に,白内障治療歴のない高齢者,64一−71歳
(平均68歳)5人とし.年齢によ る違いを調べるため 性別は問わないこととする.
測定時には,被験者は裸眼あるいはコンタクトレンズ
装着状態で行った.実験は,眼球運動記録法(アイマー
クレコーダー方式)及び主観的評価法(順位法)の2方 法により行った。
2 方法
若齢者及び高齢者を被験者として,眼球運動記録法お
よび主観的評価法により実験を行い,高齢者の色に対す
る視覚特性を調査する.
平成8年度 研究報告 大分県産業科学技術センター
(b)視覚刺激画像2(具象:室内シuン)
刺激は,デジタルカメラニニニ=ンE2に50mm標準レンズを 装着し、ウニルフェアテクノハウス人分(福祉実験住宅)
♂〕室内をカーテン閉め,照明を点灯した状態で140cmの
高さからスイッチを9ケ所横影したものを値鞘した.
無加工の画像9画面を対照群とし,スイッチ部分をフ
ォトレタッチソフトPhot os hop3.0で透明度50%の赤。緑,
真に着色加工した映像をそれぞれ9画面,全27画面作
成した.
視覚刺激画像1,2の画像を映像編集ソフトⅥedi aSui
t ePr 03.0により各5秒に映像化したものを編集し,デー
タをビデオ録画し刺激映像とした。刺激提示はFi g.2,3
を連続して行った. 2.2.1目艮球運動記録法による実験
(a)視覚刺激画像1(抽象:色彩図形)
刺激は赤,箕赤、黄,黄緑,緑,青緑,青,青紫.紫,
赤紫の10色を,マッキントッシュコンピュータのドロ
ーイングソフトFr eeHand5.0のマンセル色票を用いて作
成し,40e 視野内に収まるよう円形に配置した.
色票は直径6〇 視野(直径180mm)の円形とし,色票 の位置と順序を変え5種類,背景色は占,灰,黒の3種
類を用い.全15種類の刺激画像を作成した.
の可
等
⑳
㊥
選⑳
⑳
⑳
▼
スイッチを探し
て下さい
指示画面
‡ ;i g。1色彩図形視覚刺激画像
7キャリプレ叫 ション画面
r
指示画面
Fユg.3室円画像刺激軽示ハタmン
(c)実験手順
被験者はエアコンによる空調を行った暗室内でアイマ ークレコーダー(nac E㍉陀−7)を装着しスクリーンの前に
着席する。
ビデオデッキから刺瀕映像をスクリ】ン上に液晶プロ
ジニクターー(E‡K‡!_CD C〔)L〔眼\’ I DE〔〕PR〔妻J ECTER LC−15≡〕0〕
により投映する.
映写サイズは,Fl g.4のとおり200c 血× 150c m
(Nて「S C信号の横縦比こ皇 ‥ 3)とし、被験者とスクリ
ーン間の距離は60○ の視野角の中に映写サイズが収ま
るよう173cmとした.
刺激提示中の指示は。(a)では「自由に画面を見てF
さい」ノンターーバノン叫ま「出心を見て下さい_ とし,(玩
では。インターバノン画面は用いず「スイッチを探して下
刺激画面
仁三ざ:,−
5バターン
∴二二二二二二範二二二二二二
刺激画面
灰背景
5バターン
ヽ ■ l 一 − 1一− l l l −1 一一 l l ヽ l
r 【_】‖ −__【営_____… _【_
仁ヨ
Fr i g.2 色彩図形刺激提示パターン
平成8年鹿 研究戟尊 大分県産♯科学妓術センタw
さい」という指示を行った.
(d)測定およびデータ集計
アイマークレコーダーを用い刺激提示時の被験者の視
点の位置,注視時間を測定し,得られたデータを1′ ′ 30秒
ごとのアイマークの位置と時間を記録紙に記入する方法
により集計した.
3 結果及び考察
3.1眼球運動記録法による実験
実験結果は,若齢者・高齢者各5名の被験者について
得られたデータの平均値を比率に換算し,第1注視点は
捏示した刺激数,注視点滞留時間はいずれかの刺激に視
点が存在した時間を母数とした.
3.1.1視覚刺激画像1による注視点の分析
第1注視点は,刺激提示後に被験者の意思が働く前の
無意識な状態での視線移動から初めて停止した点である
ため,誘目性の観点から非常に重要なものと考えられる.
Fi g.8に示すとおり,白背景では,若齢者は黄,赤紫,
緑が高く,高齢者は赤紫,緑が高く英赤が低い.灰背景
ではラ 若齢者は赤,赤紫,青緑が高く青が低く,高齢者
は赤紫,赤,黄が高く青紫が低い.黒背景では,若齢者
は黄赤が高く赤紫が低いが,高齢者は黄,赤紫,黄緑が
高く紫が低い.このように,白・灰背景では若齢者・高
齢者共に似通っているが,黒背景では赤紫,其赤につい
て両者の差が人きいことがわかる.
高齢者が,白背景では黄赤,黒背景では紫が低いのは,
高齢者の視覚特性として黄赤は白色化し,紫は黒色化す
ることによる影響と予想される. Fl g.4実験条件 Fi g.5 実験風景
2.2.2 主観的評価法(順位法)による実験
刺激表示面3001Ⅹの一般蛍光灯照明下で,机上に置い
たA3縦サイズの色彩刺激チャート(Fi g.6)を見せ,
主観的な判断を求める実験を行った.
刺激チャートは,直径15mmの円形とし,赤,赤紫,紫,
青紫,青,青緑,緑,黄緑,黄色,黄赤の10色を用い,
横一列25mm間隔に配置し,カラーコピー機(RI CO PRETE
R550)より出力したものを用いた.なお,背景色は白,
灰,黒の3種類とした.
実験は「10色を目立つ順に記入して下さい」という
指示により,記入用紙に順位を付けてもらう方式(順位
法)を用いた.
刺激色は分光測色計(MI NOLTA C肝づ08d)を使用し,
マンセル表示による計測値を下記に示す.
赤蛮紫藁青嘉緑蕎黄葉
︵訳︶
相当囁璧頑ご鮨
0
5
0
2
1
1
5
0
黄葉赤豪紫轟音嘉緑薫
Fi g。8第1注視点と刺激色との関係(背景色別)
Fi g.6 主観的評価法刺激
Legend一赤:7.6R4.6/12.3
紫:9。1P3.3/′ ノ13.2 青二5.9PB3.9′ ′ ′ 11.4 緑:1.4G4.6/′ ′ 10.2 黄:8.4Y8,7/′ ′ 12.4
Fl g.7 主観的評価法記入票
赤紫:6.3RP4.5/′ 13.2 青紫:1.9P3.0′ /ノ11.4 青緑:10.OBG4.4//6.6 黄緑二2.3Gl r 8.レ11。4
黄赤:7.81′ R6.6//10.7 Fi g.9注視点滞留時間比率と刺激色との関係(背景色別)
平成8年度 研究報告 大分興産薬科挙措術センタ叩
注視点滞留時間比率は刺激提示時(5秒間)に刺激に
視線が留まった時間である.Fi g.9に示すとおり,第1
注視点と同様,黒背景では,高齢者は他色に較べ紫の滞
留時間が短いことがわかる,
3.1.2 視覚刺激画像2による注視点の分析
Fl g.10に示すとおり,若齢者は,無加工と着色加工の
違いによる発見時間への影響は少ないが,高齢者は,無
加工に較べ着色加工の方が発見時問が約レ2に短縮され
る事がわかった。
また,スイッチ滞留時間では高齢者。若齢者共に無加
工に較べ着色加工の方が滞留時間が長いことから,着色
加工によりスイッチの存在が明確化し,注視点存在時間
が長くなることがわかった.
背景では若齢者,高齢者共に其が高く青紫が低い.
私 兵緑は,若齢者,高齢者共に灰¢黒背景での順位
が高いが,白背景では低くなることから背景の明度の影
響を受けやすい事がわかり,特に高齢者の白背景の黄は
個人差が人きい色であることがわかる.
また,若齢者.高齢者共に白背景では個人差が人きく
黒背景では小さくなる事から,背景明度が上昇するに従 い目立ちやすさの個人差が増人するものと予想される.
高齢者と若齢者の違いは,白背景では,赤,紫,青緑
について両者の差が人きく,灰背景では赤,青,黒背景
では赤,紫,緑の差が人きい
4 まとめ
(1)高齢者は,着色加工により約1//′ 2の時間でスイッチを 発見することができた.
(2)高齢者は黒背景では黄・黄緑の誘目性が高い.
(3)若齢者,高齢者共に背景明度の上昇により個人差が
増大する.
特に,公共空間での表示類や安全標識,広告,ポスタ
ー,警報,信号等,情報の伝達に関するものは,様々な
身体機能,年齢の人々が様々な環境で使用することにな
る.あらゆる状況の中で,年齢を問わず,すべての人々
へ見つけやすさの配慮をするためには,注意を引かせた
い部分には,有彩色を用い,背景色の影響を考え,より
誘目性の高い色彩の使用が必要であると考えられる.
また,色彩を計画する場合には,誘目性の高さと共に
個人のばらつきの程度を考慮に入れることが必要である.
公共空間での誘導サイン等の表示・標識類の意図と色
彩の関係が生活者に記憶されることにより,安全や安心
を生むのではないかと考えられる.スイッチャ標識類,
ポスター等の色彩を計画する場合,頻度や重要度に応じ
て各分野で合意された色の使い方が今後ますます重要に
なるものと考えられる.
今回は実験では,同一照度で静止した状態での色の目
立ちやすさの違いを調べたが,住居内の照明スイッチャ
公共空間の標識類は,様々な照度環境,動的状況で使用
されることが多い.そのため,今後は照度変化や人の動
的変化による誘目性の変化を確かめる必要を感じた.
参考文献
1)神作 博・日日艮会誌,91巻−9号(1987),65−(879)
2)吉田 あこ,橋本 公克:日本建築学会人会学術講演
便覧集(九州),(1989),5406
3)神作 博二あたらしい眼科,1’ 01。2,N08(1985),1079 4)モーリツ・ツゲィムファー・図解色彩学入門,(1989),
259.美術出版社
5
4
3
2
一−
0
︵染︶匪皆翠腔≠ヽ・†ぺ
忘≡慧孟惑︷ざニ
無加工 緑 黄 赤
Fl g。10着色加工による
スイッチ発見時間の影響
Fl g.11着色加工による
スイッチ滞留時間の影響
3.2 主観的評価法(順位法)による実験
若齢者・高齢者各5名の被験者について得られた順位
の平均値をポイントとし,上下に示す領域は標準偏差と
した.なお,領域が広い程ばらつきが大きいことを示す。
白
﹁ぬ
T
ふ讐⊥
景
T
l
¢十由上
博
ー■−
1
一
2 3 4 5 6 7 0 U 9 0 ー 2 3 4 5
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青紫
柴
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赤
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黄
紫
赤紫
赤
黄赤
荒 背 青緑 浄 黄練
懐
卸
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ぬ撃
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二
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黒丁疲⊥軒
妄
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上
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[ L L ー 2 3 4 5 6 7 0 U 9 0
堂肇勅桓
争㌦相皿
濱 貿 赤 赤 紫 脅 す 青 緑 衆 赤 紫 紫 緯 婦
刺激色 Fi g.12 目立ちやすさと色との関係
Fl g.12に示すとおり9 白背景の若齢者は青が高く黄が
低く,高齢者は赤が高く青緑が低い.灰背景の若齢者は
黄が高く青緑が低く,高齢者は黄が高く青緑が低い.黒